3Dプリンターが世に出始めた頃、クリス・アンダーソン著 MAKERSという本を読みました。
ITによるモノづくり支援システムのコモディティ化が進んだ結果、多品種少量生産の流れが更に加速し個人がメーカーになれるという内容。
今、正にその通りになってますね。
3Dプリンターで一般人が拳銃を造る時代か(違法です)。
こちらは二次元の世界ではありますが、ファーストリテイリングがリリースした新企画もなかなかイケてますよ。
UTmeというこの企画。スマホのアプリでオリジナルなデザインを作成し同社に送信すると、1枚からオリジナルTシャツを造ることが出来るというもの。それも僅か1,990円(税・送料別)というから驚きです。
子供たちに大ウケで、何種類もプロトタイプを作っては保存してました。
あと幾つか作って発注してみます。
さて、UNIQLOのビジネスモデルの根っこはSPA(アパレル製造小売り)。自らデザインして自ら造って自ら売るのが基本です。
ベーシックなアイテムを大量に生産しシーズン中に売り切ることにより、単価は安いながらも高い収益を上げてます。
翻ってUTmeはどうでしょう。デザインはユーザー任せ。発注ロットは恐らく微々たるもの。受発注、配送に関わるコストを考えると何でこんな事を始めたのかなと最初は首をかしげました。個別オーダーを受けるには企業規模が大き過ぎる気がするのです。
思うに、価値観の多様化が進んだ結果、ひとつのデザインでヒット商品を生み出すのが困難な時代になったんじゃないかと。
お客様の欲しいモノは何か。徹底したマーケティングを実施しデザイナーが渾身の力でデザインしたものでも、全てのお客様に響く訳は有りません。ならばメーカー側が提案するよりも、お客様が欲しいと思うデザインをお客様自身が作ってもらった方が確実ですよね。
副次的な効果としては、Tシャツというベーシックなアイテムを購入するという行為に店頭で選ぶ以上のエンターテイメント性を与える事で顧客満足度の向上が見込まれます。
何よりもこうして色んなところで取り上げられることで広告塔としての効果を織り込んでるのでしょう。
あちこちで叩かれた著作権絡みの利用規約に関しても、図らずも話題性を盛り上げる結果となりましたね。即座に改善策が提示された事もリスクマネージメントの観点から評価されるんじゃないでしょうか。
そんなこんなで話題となり、日本人の1割が1枚だけ購入したとしても約200億円の売り上げとなります。しかも同社のターゲットはWorldWide。
これに関わるIT投資も、同社のシステム投資規模からするとそう大したものではないでしょう。
そう考えると、費用対効果は相当高いんじゃないでしょうかね。
これを不動産に例えると、建て売り住宅から注文住宅へ、或いはマンションの専有部分のカスタマイズが極めて簡単に楽しくできるようになるといったところでしょうか。
スマホのアプリで外観や間取り、素材やクロスのデザイン等をサクッと作成し、ビルダーに送ると低コストで注文住宅が建つ。
そんな時代が来るのかな。