昨日は久々に宅建協会主催の法定講習会に参加しました。
お題目は、「フラット35の現状及び中古住宅の取り組みと今後の流れ」と「重要事項説明書の書き方」。
何を今更重要事項説明書の書き方を勉強してシロートでもあるまいしと訝る向きもあるでしょうが、今年5月に参院にて成立した宅建業法一部改正により今後は不動産取引における宅地建物取引業者が果たす役割・責任が一層重要・重大になって参ります。我々業者の意識及び資質の向上を図り、消費者利益の保護を目的として詳細な物件調査とその結果の記載が義務付けられます。
今回の宅建業法改正の主な目的は、他の諸外国と比して既存住宅の流通量が極めて少なく住宅ストックの積み上げが殆ど出来ていない国内流通市場の改善を図り、住宅ストックの有効活用と住み替えし易い環境の整備、ひいては市場拡大による経済の活性化にあります。
アメリカを例に挙げると、住宅投資額累計額<住宅ストック額であるのに対し、日本では住宅投資累計額>>>>>>>住宅ストック額というのが現状です。その差額は何と500兆円。
さすがに土地神話はとっくの昔に崩壊してますが、建物自体も20年で一律に減価するため、幾らリフォームして住宅性能を維持しても評価されない⇒築年数に応じて安くしなければ売れない⇒中高年齢層住み替え困難⇒ますますストック目減りというスパイラルに陥っているのです。
いや、正確に言うと、評価されないのではなく、評価する基準・機関が無かったのです。
そこで、国を挙げて住宅ストックの底上げを図り、既存住宅の流通促進の為に推進するのが事前インスペクション(保険申込前現場検査) & 既存住宅売買瑕疵保険がセットになった保険制度。
これにより、売主にとっては第三者機関が住宅性能をきちんと評価して状態やリフォームによる価値の向上を反映した価格査定が出来、万一売買後に欠陥が見付かった場合でも補修費用等の保険金が下ります。
買主にとっては、プロが検査した建物調査レポート付きとあれば安心して購入する事が出来ると同時に、万一の際も保険金が下りるので安心ですよね。更には築後20年(木造・非耐火建築物)~25年(マンション・耐火建築物)超の住宅ではこれまで恩恵に与る事が出来なかった住宅ローン減税も既存住宅売買瑕疵保険を付保する事により対象になるのです。これは大きい。
がん保険に入る前に精密検査するでしょ。あれと似たようなものですかね。
当社も先日成立した取引の際に当該制度を活用致しましたが、売主様買主様共に喜んで頂くことが出来ました。
この流れを加速するのが今回の宅建業法の一部改正。宅地建物取引業者には以下の義務が課されます。
・売主との媒介契約締結時にインスペクション業者の斡旋に関する事項を記載した書面の交付義務。
・買主に対してインスペクション結果の概要を重要事項として記載・説明する義務。
・売買契約成立時に建物の状況について売主買主双方が確認した事項を記載した書面の交付義務。
これは売買当事者にとっては非常に喜ばしいものではありますが、我々にとっては結構大変な作業。ですが消費者利益保護の為に必ず背負わなければならない役割と責任です。
更には昨年3月に国会に提出された民法(債権法)改正法案では、契約の文言重視=当事者間の合意を重視する方向にシフトする事が予想されます。
つまり、重要事項説明書に記載された定型的な内容でカバーされない当事者間の合意を、特約事項として全て列記するのが今後のスタンダードになるのだそうです。
我々宅建業者が仲介業者として存在する意義がここに在ります。不動産取引のプロとして当事者間の合意形成をサポートし、仔細に渡って文書化して双方納得の行く書面を作成する事。
責任は重大ですが遣り甲斐があります。